宮城道雄作曲
石橋令邑作歌
筝:四上がり半雲井→六、斗を1音上げ、巾を九の甲
三絃:本調子→三下がり
一樹の陰に宿りあひ、同じ流れを掬ぶだに、別れ悲しき習ひなり。
萌え出づるも枯るるも同じ野辺の草、いづれか秋にあはで果つべき、浮世の性に嵯峨深く、涙の祇王じ甲斐なくも柴の庵を結びける。秋の初風吹きぬれば、星合いの空眺めつつ、天の戸渡る梶の葉に、思ふ事書く頃なれや。
燈かすかかきたつる庵の網戸をうち叩く仏御前はさんげもさめざめと一つ蓮の身となりぬ。
宮城道雄さんの名曲。
そんなに長くはない。
でも濃い。
宮城さんの曲って概して、そう。
筝で歌うのが難しくて、
まずは三絃で歌をおぼえた方がいい。
合奏もなかなか難しいらしい。
手事の冒頭部分は、本当に秋らしい風情が表現されていて素晴らしいと思う。
地歌の歴史からみれば新曲の部類ではあるけれども、
他の新曲とは一線を画し、他の追随をゆるさない芸術的完成度の高さ、演奏する側はもちろん聞く側の手応えの大きさ。
どうやら10年くらい前の、
まだまだ習いはじめたばかりのころに習ったらしく、
必死の書き込みがちらほら。
今では「なんでここが要注意なの?」と思うものあり、
または「ああ、この感じが箏曲らしいけど、当時はそれがわからなかったんだな」と当時の自分の困惑がみえたり。
三絃のほうは弾いていないところをみると、
まだ学部生のころか、院生になってすぐくらいかな。
あるていど長く取り組まないことにはこういうことには気づくことができなかったかもね。
インスタントな楽しさとは縁遠いから今の時代にはあわないかもしれないな。
もったいないことだけど。