明治新曲、地歌手事物、四季物
作詞:三井家後室
作曲:古川瀧斎
筝手付け:山口巌
三絃二上り→三下り
筝平調子→中空調子
富士の根の 雪も流石に春の色 見せて霞める朝ぼらけ 桜咲くかたは何処か白浪の 寄する岸辺の水匂いつつ
昨日今日いつしか夏にならの葉の 風に落ちくる一声は まだはずかしの森蔭に 忍ぶも嬉し足引の 山時鳥鳴き捨てて 何方の空も短夜の
(手事)
隈なく照らす月かげに 君が調ぶる爪琴の 音に通い来る松虫の 声も哀れに秋更けて
まだき時雨の雲と雲 行き合う空の年波に 尽きぬ流れの龍田川 愛でし紅葉の世の憂きを 知らで今年も送り来て 重ぬる千代の春ぞ迎えん
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三絃がの第一絃=神仙です。
筝も神仙スタートの平調子→中空調子。
この調絃の曲は難しめな印象があります。
そしてこの曲は実際に難しいです。
特に筝で歌うのはとても難しくてなかなか仕上がりません。
手事も三絃、筝ともに難しくてそれだけに取り組み甲斐はあります。
「まあ、玄人の曲やな」
と、先生。
歌詞自体は四季を歌い込み、色っぽさはありつつもお上品な感じです。