作曲:石川勾当
筝手付け:八重崎検校
三絃:本調子
筝:半雲井調子→中空調子→平調子→半雲井調子
君がため、春の野に出で若菜摘む、我が衣手に雪は降りつつ
春過ぎて、夏来にけらし白妙の、衣干すちょう天香具山
み吉野の山の秋風小夜更けて、古郷寒く衣うつなり
秋の田の刈り穂の庵の苫を粗み、我が衣手は露に濡れつつ
蟋蟀鳴くや霜夜の狭筵に、
(手事)
衣片敷き独りかも寝む、衣片敷き独りかも寝む
作曲者もうまく弾けなかったという難曲だそうです。
名曲のエピソードとしてこの手の話はよくあるような・・・確かに難しい曲。
でも、
これをやりかけると他の曲がつまらなくなります。
一息が長い・・・チラシはその切迫した手の様子から「百拍子(実際は107拍子だそうですが)」と言われるようです。
チラシ以外にも手事の各所に一息が長かったり、
指遣いがややこしかったりするところが多数。
おまけに高ツボも多いです。
第三絃の23番なんてほとんど使わないですもの。
習ったときには「これ、音でるん?」
とえらそうにも疑いましたが、
絹糸なら出ます。
テトロンだとちょっと難しかも。
この曲を日常的な練習で糸の耐久性の観点からとはいえテトロン糸を使うのはきついな。
なにより、ちゃんと練習できないような気がします。
これ、準師範の試験曲に必ず入ることになっています。
私が受ける前までは筝で出題されるのが暗黙の了解でしたが、
さて試験となったときに、「三絃のどこそこから・・・」って言われて頭がまっしろになりました。
三ヶ月以上は三絃は弾いていなかったですからね。
ま、楽譜を持っていただけ上等だったでしょうよ。
講評はさんざんで試験は見事に落ちました。
筆記が悪かったのが致命傷だったのですけどね。
そういう思い出の曲でもあります。