長歌もの
作詞:不詳
作曲:三絃菊岡検校、箏八重崎検校
調絃:三絃本調子→二上り、筝半雲井調子→平調子
千早振る神の教えの跡垂れて、四海波間も静かなる、松の嵐の音までも、小夜更け渡る神神楽、
吹く横笛の音も澄みて、歌う声声面白や、四方の景色は朝倉や、なお音楽の袖袂、翻し翻し、昔を此処に斯くやらん、
実に天照日の本の、神と君との隔てなく、御代も栄えん宮柱、
太きたてて敷島の、大和島根をそのままに、尽きぬ恵みの光ぞと、夕日隠れの雲の端の、棚引く天橋立や、そも神歌は烏羽玉の、我が黒髪を乱さずに、結び定めぬ手枕に、迷う輪廻の恋の種、交わす言葉の数々を、浜の真砂にさっと引く、打つ白波や浮巣の岩に羽を休め、比翼の鳥の妹背ごと。
人目忍ぶや今宵扇の要の契り、手にくるくると日照り傘、翳すや加賀の扇笠、扇車や班女が閨の花扇、巡る縁は扇の別れ、風にちらちら散るは桜の、嵐木枯、除けて吹き、花の契りも可愛ゆらし、
さるほどに床の滴れ露乞いて、淡路が島の東も西も、海満々となんなくに、風を連ねて空に架かかれる浮橋を打ちわたり、打ちわたり立ち迷う、雲の袖袂、引くは潮の時津風。
治る浪や芦原の、国富み民も豊かにて、万歳祝う春の声、幾千秋と尽きじなく、治る御代こそ久しけれ。
安定の菊岡・八重崎コンビといった印象です。
長歌ものなので器楽部分がなく、ずうっと歌いっぱなし。
器楽部分がないのはこのコンビにしては珍しいこと、と解説にあります。
神さまを連想させる言葉が連ねられて始まり、
とちゅうでなんだか色っぽくなり、
国の繁栄を寿いでまとめる、
聖俗表裏一体な印象です・・・中世、近世の日本の寺社ってこういう感じだったんだろうな〜と。
この曲の前に習っていたのがマイナー系幾山検校の磯の春と打ち盤/横槌でしたので、
「ああ、いつもの感じやわ〜」と先生と一緒にしみじみ「京地歌の定番感」を味わいました。