作曲:峰崎勾当
箏手付:八重崎検校(平調子)、市浦検校(雲井調子)
三絃:三下り
箏:平調子または雲井調子
歌詞:
越路潟、お国名物様々なれど田舎訛りの片言まじり、
白うさぎなる言の葉に面白がらしそなこと、直江浦の海人の子が七つか八目鰻まで、
績むや網麻(あみそ)の綱手とは、恋の心も米山の、当帰浮気で黄蓮も、何糸魚川いとうおの、もつれもつるる草占の油漆と交わりて、
末松山の白布の縮みは肌のどこやらが見透く国の風流を、移し太鼓や笛の音も、
弾いて歌うや獅子の曲。
向かい小山のしちく、竹枝節揃えて切りを細かに十七が、室の小口に昼寝して、
花の盛りを夢に見て候
(手事)
夢の占方越後の獅子は、牡丹は持たねど富貴は己が姿に咲かせ舞い納む、
姿に咲かせ舞い納む
歌詞のなかに越国の名物が織り交ぜられた、非常に華やかでおめでたい雰囲気の曲。
当帰や黄蓮は生薬の名前。
峰崎勾当作曲『吾妻獅子』『有馬獅子』とともに初期大坂系の代表作であると同時に、
京都の八重崎検校の手付けがビシバシ光る・・・まぶしいったら、もう。
京都系ゆえの身贔屓もありながら、
やはり八重崎検校の手付けがあって生きる曲だと思う。
三絃だけを弾いている分には感じない緊張感が合奏時にはあります。
八重崎検校の手付部分の箏は低平調子。
四、六の単独の強押しに加えて前後のつながりの複雑さと、
そこここで参戦してくる七ー九の掛け押しで筋肉痛は必至。
「弾いて歌うや」から雰囲気を変えてテンポを上げて手事に突入。
多少の緩急はあっても、およそそのままの勢いで後歌が畳みかける展開。
「越後獅子」といえば長唄が有名で(あと美空ひばりさんの「越後獅子の唄」)、
文化8(1811)年に三世中村歌右衛門の七変化舞踊『遅桜手爾葉七文字』の中に長唄として取り入れられ、それをプッチーニが『蝶々夫人』に引用しているとか。
個人的には、
師匠職格取得披露の演奏会における演目の一つということもあり、思い出深い作品。
この5月に所属会の古典伝承を目的とする会で三絃本手を弾く予定。
三絃の替手もあるらしいので今度、お稽古してもらおう。
富山清琴師の歌と三絃の演奏をどうぞ。